ひーぬむんのテーマ

(唄をつくりました)

沖永良部島の下平川(ゆしきゃ)校区で言語復興の港が2016年に始めた「ゆしきゃ しまむにプロジェクト」では、2017年の夏休みの自由研究として、4家族が親子でしまむにコンテンツを制作しました。その後も4家族は島内外でプロジェクトの成果を発表したり、定期的に集まって各家庭での取り組みを共有したり、「ひーぬむん」というチーム名でしまむにの継承活動を続けています。2018年10月にはNHK EテレのハートネットTVでも紹介されました

ゆしきゃ校区の8つの字(集落)の名前が入ったひーぬむんの唄ができたので、歌詞とさんしる(三線)譜と合わせて紹介します。ほとんどひょーむに(上平川方言)の発音のとおりにメロディがついているので、制作過程を紹介しながら、単語の発音のことも少し説明します。

聴いてみよう、ひーぬむん

まずは、曲をつけてくれた要秀人が唄ったものと、ひーぬむんの子どもたちが唄っている動画をどうぞ!このページの一番下でmp3ファイルをダウンロードできます。動画は2018年9月に上平川公民館で行われた、ひーぬむん発表会・ハートネットTV取材クルー歓迎会のときのものです。この日に曲ができあがって、直前に裏で何回か練習しただけだったので、動画では1番しか唄っていませんね。

ひーぬむんのテーマ - 唄|要秀人
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唄ってみよう、ひーぬむん

『ひーぬむんのテーマ』は、​ひーぬむんの大人たちでお酒を飲んでいるときに「ひーぬむんのことがわかる歌があったらいいな」「大人も子どもが歌える現代風の島唄がいい」と話しながら、歌詞をつくりました。

できた歌詞は、ひょーむに(上平川方言)で実際にどうやって発音するかと一緒に、ひょー(上平川集落)に住む要秀人に渡しました。秀人は、しまむにの教材としても使えるようにと考えて、ほぼ発音のとおりにメロディをつけてくれました。

 

沖永良部語の語彙音調は、どの拍が「高いか・低いか」、もしくは、「どの拍で高くなるか・低くなるか」として記述することができるので、こんなふうに書きました。赤い線が文字の上にある拍は高く、文字の下にある拍は低く発音します。

song_tone.png

語彙音調のあらわし方

「アクセント」と言われることもある、単語の発音のしかたは、書きあらわすときに少し知識と工夫が必要です。これはしまむにを覚えるときにも使えるし、専門的な論文もデータの部分はこれで読めるようになるので、唄の最初の単語「ゆしきゃ」を例にあげてざっくりと説明します。

tone.png
 

弾いてみよう、ひーぬむん

沖永良部島では、さんしる(三線)譜はギターのタブ譜のように書くのが一般的です。さんしるバージョンの譜面を掲載するので、三線をお持ちの方は弾いてみてください。

<pdfはこちら(最後に工工四との対応を示しました)

TAB_hiinumun.png

『ひーぬむんのテーマ』のmp3ファイル(1.8MB)をダウンロードできます。​

mp3ダウンロード(唄あり)

mp3ダウンロード(唄なし)

この楽曲は自由に使っていただいて構いませんが、「お問い合わせ」からひとことお知らせいただけると、ひーぬむんの言語継承活動のはげみになります。商用目的で使用される際はご一報ください。子どもに聞かせられないような改変はしないでください。

『ひーぬむんのテーマ』2018年11月8日公開

作詞:ひーぬむん

作曲、唄:要秀人

ピンクの箱の解説

「ゆしきゃ」は、「ゆ・し・きゃ」という3拍の語で、沖永良部語の語彙音調は、この「拍」を単位として記述することができます。

 

【分析1】では、それぞれの拍が「高い・低い」発音ということをマークします。「高い」を"H"もしくは"〇"、「低い」を"L"もしくは"●"であらわし、「ゆしきゃ」の音調は"HLH"や"○●○"と書かれます。

【分析2】では、「ゆ・し・きゃ」の発音は、「1拍目から2拍目にかけて低くなり、2拍目から3拍目にかけて高くなる」という分析もできます。「低くなる」を" ] "、高くなるを" [ "という記号であらわし、"ゆ]し[きゃ"と書かれます。

 

国立国語研究所の危機言語DBウェブページでは、【分析2】の表記を使った単語資料が音声付きで見られます。「上平川」のチェックボックスにチェックを入れて「検索」すると、公開されているすべての単語が表示されます。

ーここからはもっとややこしい話ですー

ここでいう「分析」とは、「沖永良部語の文法知識とはどういうことが頭の中に入っているか」という言語学の言葉使いです。音の高さはなめらかに変化する周波数(ピッチ曲線)として観察されるので、拍単位で高いとか低いとかのようには見えません。人によって、また発音されるそのときどきで、無限の実現形があります。

しかし頭の中にある文法知識は、上記のような「高い・低い」とか「次で上げる・下げる」のような有限の知識として記述できるようなのです。頭の中から声に出すまで実際にどうやっているかは謎ですが、【分析1】【分析2】のような知識があれば「なめらかに変化する周波数」で発音できる…と、言語学者は今のところ考えています。

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