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言語復興の港のこと

​第1回

「いま何もしなければ」

なくなってしまう

消滅危機言語

与那国島(沖縄県八重山郡与那国町)には、島のことばに関するこんなことわざがあります。​

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琉球の他の地域でもいろいろなバージョンがあるようですが、故郷のことばは故郷の親や先祖、彼らから伝えられてきた大切なことに通じるというふうに与那国島では説明されました。

 

日本の消滅危機言語

6000-8000あるとされる世界の言語の約半分が、「今何もしなければ」今世紀中に消滅してしまうと言われています。そのような消滅危機言語として、日本には、日本語とは別系統のアイヌ語、日本語と同じく日琉祖語にさかのぼることができる八丈語と、先ほどのことわざのことば与那国語を含む6つの琉球諸語があると、ユネスコが報告しています。

この8つは、言語学的観点から消滅危機「言語」として数えられていますが、これらの下位分類(例えば八重山の竹富島方言など)や、日本本土で話されている諸方言など、多くの地域言語が日本の消滅危機言語です。標準語に対して「方言」とも呼ばれる地域言語は、標準語がなまったものや標準語より劣ったものではなく、それぞれが独自の文法を持った言語体系です。

 

言語の多様性

一つの言語が消滅することは、その言語が支える文化や価値観を失うだけでなく、人類共通の財産である言語の多様性を失うことを意味します。多様性が失われた世界は、異なる価値観を排除する画一的な世界とも言えるでしょう。地域言語を継承し、社会と個人の中に言語の多様性を保持することは、現在私たちが直面する重要な課題と言えます。

 

言語の記述・記録(記録保存)と、

言語の保存・復興(継承保存)と。

ある言語の文法書や辞書、テキスト資料を残すことは、その言語の全体像を理解して、消滅危機言語を保存するための土台となります。しかしこれだけでは、生きた言語を保存することにはなりません。生きた言語とは、それを使用する人の内(脳内の無意識の知識)に存在するものだからです。どれだけ多くの言語の記録が博物館に残されても、話者がいない言語は消滅してしまいます。生きた言語を保存するためには、その言語が次世代に継承され、話者が常に存在する必要があります。

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消滅危機言語復興のためのプラットフォーム

私たちは、地域言語の保存・復興のために、言語学の研究者、言語学以外の異分野専門家、学術研究をより広く・わかりやすく伝える専門家であるデザイナー、そして地域言語コミュニティが協働するしくみをつくることにしました。さまざまな能力・技術を持つ専門家や、異なる地域で得られた経験を共有する場(研究プラットフォーム)、そして地域言語コミュニティが主体的に言語復興を続けるしくみをつくるための、言語の保存・復興を目的とした「言語復興の港」プロジェクトです。

 

これから何回かに分けて、言語復興の港のことをお話します。

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